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七 - 2
い。これらは吾輩のいわゆる旧式運動なる者である。新式のうちにはなかなか興味の深いのがある。第一に蟷螂狩(とうろうが)り。――蟷螂狩りは鼠狩(ねずみが)りほどの大運動でない代りにそれほどの危険がない。夏の半(なかば)から秋の始めへかけてやる遊戯としてはもっとも上乗のものだ。その方法を云うとまず庭へ出て、一匹の蟷螂(かまきり)をさがし出す。時候がいいと一匹や二匹見付け出すのは雑作(ぞうさ)もない。さて見付け出した蟷螂君の傍(そば)へはっと風を切って馳(か)けて行く。するとすわこそと云う身構(みがまえ)をして鎌首をふり上げる。蟷螂でもなかなか健気(けなげ)なもので、相手の力量を知らんうちは抵抗するつもりでいるから面白い。振り上げた鎌首を右の前足でちょっと参る。振り上げた首は軟かいからぐにゃり横へ曲る。この時の蟷螂君の表情がすこぶる興味を添える。おやと云う思い入れが充分ある。ところを一足(いっそく)飛びに君(きみ)の後(うし)ろへ廻って今度は背面から君の羽根を軽(かろ)く引き掻(か)く。あの羽根は平生大事に畳(たた)んであるが、引き掻き方が烈(はげ)しいと、ぱっと乱れて中から吉野紙のような薄色の下着があらわれる。君は夏でも御苦労千万に二枚重ねで乙(おつ)に極(き)まっている。この時君の長い首は必ず後ろに向き直る。ある時は向ってくるが、大概の場合には首だけぬっと立てて立っている。こっちから手出しをするのを待ち構えて見える。先方がいつまでもこの態度でいては運動にならんから、あまり長くなるとまたちょいと一本参る。これだけ参ると眼識のある蟷螂なら必ず逃げ出す。それを我無洒落(がむしゃら)に向ってくるのはよほど無教育な野蛮的蟷螂である。もし相手がこの野蛮な振舞をやると、向って来たところを覘(ねら)いすまして、いやと云うほど張り付けてやる。大概は二三尺飛ばされる者である。しかし敵がおとなしく背面に前進すると、こっちは気の毒だから庭の立木を二三度飛鳥のごとく廻ってくる。蟷螂君(かまきりくん)はまだ五六寸しか逃げ延びておらん。もう吾輩の力量を知ったから手向いをする勇気はない。ただ右往左往へ逃げ惑(まど)うのみである。しかし吾輩も右往左往へ追っかけるから、君はしまいには苦しがって羽根を振(ふる)って一大活躍を試みる事がある。元来蟷螂の羽根は彼の首と調和して、すこぶる細長く出来上がったものだが、聞いて見ると全く装飾用だそうで、人間の英語、仏語、独逸語(ドイツご)のごとく毫(ごう)も実用にはならん。だから無用の長物を利用して一大活躍を試みたところが吾輩に対してあまり功能のありよう訳がない。名前は活躍だが事実は地面の上を引きずってあるくと云うに過ぎん。こうなると少々気の毒な感はあるが運動のためだから仕方がない。御免蒙(ごめんこうむ)ってたちまち前面へ馳(か)け抜ける。君は惰性で急廻転が出来ないからやはりやむを得ず前進してくる。その鼻をなぐりつける。この時蟷螂君は必ず羽根を広げたまま仆(たお)れる。その上をうんと前足で抑(おさ)えて少しく休息する。それからまた放す。放しておいてまた抑える。七擒七縦(しちきんしちしょう)孔明(こうめい)の軍略で攻めつける。約三十分この順序を繰り返して、身動きも出来なくなったところを見すましてちょっと口へ啣(くわ)えて振って見る。それからまた吐き出す。今度は地面の上へ寝たぎり動かないから、こっちの手で突っ付いて、その勢で飛び上がるところをまた抑えつける。これもいやになってから、最後の手段としてむしゃむしゃ食ってしまう。ついでだから蟷螂を食った事のない
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