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六 - 3
もし壊(こ)わしでもしちゃあ大変ですから、もう好い加減になすったら宜(よ)うござんしょう」と注意をする。得意なのは持主だけで「ところが壊われないから妙でしょう」と、くちゃくちゃになったのを尻の下から取り出してそのまま頭へ載せると、不思議な事には、頭の恰好(かっこう)にたちまち回復する。「実に丈夫な帽子です事ねえ、どうしたんでしょう」と細君がいよいよ感心すると「なにどうもしたんじゃありません、元からこう云う帽子なんです」と迷亭は帽子を被ったまま細君に返事をしている。

    「あなたも、あんな帽子を御買になったら、いいでしょう」としばらくして細君は主人に勧めかけた。「だって苦沙弥君は立派な麦藁(むぎわら)の奴を持ってるじゃありませんか」「ところがあなた、せんだって小供があれを踏み潰(つぶ)してしまいまして」「おやおやそりゃ惜しい[#「惜しい」は底本では「措しい」]事をしましたね」「だから今度はあなたのような丈夫で奇麗なのを買ったら善かろうと思いますんで」と細君はパナマの価段(ねだん)を知らないものだから「これになさいよ、ねえ、あなた」としきりに主人に勧告している。

    迷亭君は今度は右の袂(たもと)の中から赤いケース入りの鋏(はさみ)を取り出して細君に見せる。「奥さん、帽子はそのくらいにしてこの鋏を御覧なさい。これがまたすこぶる重宝(ちょうほう)な奴で、これで十四通りに使えるんです」この鋏が出ないと主人は細君のためにパナマ責めになるところであったが、幸に細君が女として持って生れた好奇心のために、この厄運(やくうん)を免(まぬ)かれたのは迷亭の機転と云わんよりむしろ僥倖(ぎょうこう)の仕合せだと吾輩は看破した。「その鋏がどうして十四通りに使えます」と聞くや否や迷亭君は大得意な調子で「今一々説明しますから聞いていらっしゃい。いいですか。ここに三日月形(みかづきがた)の欠け目がありましょう、ここへ葉巻を入れてぷつりと口を切るんです。それからこの根にちょと細工がありましょう、これで針金をぽつぽつやりますね。次には平たくして紙の上へ横に置くと定規(じょうぎ)の用をする。また刃(は)の裏には度盛(どもり)がしてあるから物指(ものさし)の代用も出来る。こちらの表にはヤスリが付いているこれで爪を磨(す)りまさあ。ようがすか。この先(さ)きを螺旋鋲(らせんびょう)の頭へ刺し込んでぎりぎり廻すと金槌(かなづち)にも使える。うんと突き込んでこじ開けると大抵の釘付(くぎづけ)の箱なんざあ苦もなく蓋(ふた)がとれる。まった、こちらの刃の先は錐(きり)に出来ている。ここん所(とこ)は書き損いの字を削(けず)る場所で、ばらばらに離すと、ナイフとなる。一番しまいに――さあ奥さん、この一番しまいが大変面白いんです、ここに蠅(はえ)の眼玉くらいな大きさの球(たま)がありましょう、ちょっと、覗(のぞ)いて御覧なさい」「いやですわまたきっと馬鹿になさるんだから」「そう信用がなくっちゃ困ったね。だが欺(だま)されたと思って、ちょいと覗いて御覧なさいな。え?厭(いや)ですか、ちょっとでいいから」と鋏(はさみ)を細君に渡す。細君は覚束(おぼつか)なげに鋏を取りあげて、例の蠅の眼玉の所へ自分の眼玉を付けてしきりに覘(ねらい)をつけている。「どうです」「何だか真黒ですわ」「真黒じゃいけませんね。も少し障子の方へ向いて、そう鋏を寝かさずに――そうそうそれなら見えるでしょう」「おやまあ写真ですねえ。どうしてこんな小さな写真を張り付けたんでしょう」「そこが面白いところでさあ」と細君と迷亭
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